ⅩⅦ.ラテンのアイソレーション

 

 

「アイソレーション」?  聞き慣れない言葉ですよね。一般には。

 

しかし、ソロダンスの世界では、 ジャンルにもよるけれど頻繁に出て来ます。この言葉。

特にヒップホップやジャズダンスあるいは流行りのK-POPみたいなダンスでは常識かつ、“ アイソレ命 ”  みたいなところがあります。

 

辞書を引いてみると、ISOLATION とは  分離・独立・隔離、といった意味。

 

要は、「からだの一部分を独立して動かすこと」

「パーツをそこだけピンポイントで動かすこと」

 

「他の部分は完全静止させて、そこだけを動かす動作」

「他はビシッと止めて、そこだけ動かす・・」 みたいな理解が良いです。

 

 

このアイソレーションですが・・

正直、ラテンソーシャルのような ペアダンスの世界では、 そんなにエネルギーを注がなくても良い気がしてます。

特に最初の頃は。

ダンスを始めた頃に好きなだけ時間を掛けられる人なんて限られていると思う。

したがって、そのダンスに合った時間のかけ方を考えるべき。

 

限られた時間しかないのであれば、ステップの正確性とか、基本技術の徹底(特に無意識に足が運べるところまで)、姿勢の矯正、ポジショニングの正確性、力の加減(テンションの調整)・・といったところに時間をかけるべき。 女性の場合は特に回転動作。 各種、基本をやり抜くのが大事。 慣れて、そんなに意識せずにスムーズに動けるようになるまで。

 

具体的には、

男は単純な技でまったく構わないので一曲スムーズに相手を踊らせるところまでなんとか漕ぎつける。これが第一目標。 特に遠すぎず近すぎない「適切なポジション取り」が大切。大事なのは下半身です。 動きの速いサルサではどうしても上半身の動きに目が行きがちだが、下半身がとにかく大事。

(上半身を気にするな・ということでは決してないですよ)

 

女はふらつかないように綺麗な姿勢を保ちながら各種ターンがスムーズに出来る、慌てずリードに反応できるところまでが第一目標。 こちらもやはり、身体全体もそうですが特に下半身(腰・ウエストから下)への意識が大事ということになるかと。

 

要は、男女ともリード&フォローの技術こそがラテンソーシャルを楽しむための一番大事なところなので、

相手を想定しながら下半身を中心に、全身にリズムを馴染ませていく

そこに限られた時間を使うべき・そう思ってます。

ソロダンスであれば100%自分に集中すれば良いですが、ペアダンスの場合、自分を制御するといっても『目の前の相手がいてこその自分』ですからね。 そこを忘れると「相手を誘導(&エスコート)する」「相手に反応する」技術は身につかない。

 

とにかく優先順位(プライオリティー)が大切かと。 ペアダンスを踊るために必要なことからまず練習する。 準備運動の時にソロダンス必須のアイソレーションをやるのは、最初からおすすめですけどね。 腰を中心に。(身体固くなっている人がまずほとんどなので)

 

ただし・・ある程度の段階になってくると、「あの人はなんであんなグルーヴを出せるんだろう?」「見た目がなんかラテンっぽくて格好いい。どうして?」

みたいなところに目が行ったりします。 やるうちに目が肥えてくるからね。

つまり、余力や欲が出てくれば、アイソレーションのマスターはもちろんおすすめ。

(繰り返しになりますが、基本をやり抜くこと・そこに時間をかけた上での話です。)

 

リードする男性とフォローする女性という事で言えば、

女性の方がマスターしたアイソレーションの効果を、自分のダンスに反映させやすいでしょうね。

フォローすなわち反応する過程でアイソレは組み込みやすいんですよ。

そういうの無しでごく自然に反応するだけでも良いし、アクセントとしてアイソレを使った動きを組み込んだりするのも良いし、そこは本人の美意識次第。

まあ、最初はひたすら “ 癖の無いナチュラルな動き ” を身に付けた方が良いと思うけれど。

(※女性の方がアイソレを組み込みやすい・に関しては、ネット上のサルサ向けアイソレーションの動画がほとんど女性向けである、その事からもわかるのではないでしょうか。)

 

では、ある程度動けるようになった段階で本人がアイソレに取り組みたくなったとして、

『全身くまなく独立して動かそうとするヒップホップ系のダンスと同じようなトレーニング』が必要かと言えば、そんなことはなくて、

ラテンソーシャルで動かす部分は、限定されています。それは、

 

1位「腰」

2位「肩」(肩甲骨も含む)

3位「リブケージ(ろっ骨)」

 

だと思います。

 

なんと言っても1位は「腰」。 ラテンソーシャルのアイソレーションは「腰」が大切かと。

(もともとラテンダンスに自然に備わっている・自然に立ち現れる腰の動きをアイソレを使って学ぼうとしているだけで、アイソレーションはツールに過ぎない・・ といった反論もあるかもしれませんが、まあ、そこはかなり被っているし、優れたツールであるのは間違いないので、ここはこのまま話させて頂きます。)

 

まあ、その辺の腰の動き等は、それなりに自然に踊れるようになってから適時、レッスンの中でやってみたいとは思っていますが、

文字だけではアイソレーションというものがピンと来ないと思うので、映像を出してみます。 

 

私はネット上のサルサ動画はかなり見て来た方・・だと思うのですが、今まで無数に見て来た中で最も印象的なアイソレーション絡みの映像といえば・・  これかな。

 

 

 

 

ボディムーヴメント、というタイトルがついてますが、実際そうなんですけど

これ、アイソレーションが出来てないと絶対に出来ない動きなんですよ。

アイソレがベースで、その上にボディムーヴメントがある、そういう構造。

 

でも、サルサやろうと思ってる方はそんな難しいこと考える必要はなくて、

これをいきなりマスターしようなんて考える必要もなくて、

 

『人間の身体の可動域は実はこんなに広く、使おうと思えば使えるんだ』

『ソロで音にハメるというのは、こういう感じなのか、ラテンバージョンの場合。 これは “ 数あるスタイルの中の一つの到達例 ” なのかもしれないが・・』

  

くらいの「認識」さえ持ってもらえれば、それでもう充分です。

まあ、初期段階から良いものをたくさん見ておけば、どっかで「ああ・・そういえば、ああいった感じでやればいいのか・・」と羅針盤のように効いてくる場合もあるので。

 

あらためて今回見返してみると・・ 肩甲骨と肩の動きが凄いですね。彼女。

サルサには相手と離れて踊る「シャイン」というパートがごく短時間入ることがあるのですが、こういう人がシャインでこういう動きを見せてきたら猛烈に楽しいだろうねえ。 というか「す・凄ぇ」とビビるかもしれない。(笑)

実際この映像は、『グルーヴというものの出し方の高度な実例』・・であることは確かだと思います。

メチャクチャ練習しないと、このボディムーヴメントは出来ません。

 

くどいようですが、

ペアで踊る際にこういうアイソレーションが必要ということではないですよ。

ソロのダンスとは違いますからね。 まあ、ほぼほぼ無関係。

 

ソーシャルの目的はペアで組んで楽しく踊り切る・・ことですから、限られた時間しかないのであれば、ペアで動く・反応する力をつけること、それに集中した方が絶対に良い。

とにかく『ナチュラルで癖のない動き』を身に付けることをおすすめします。初期段階、基礎テクニックを身に付ける段階においては特に。

 

ただ、より上を目指して、豊かでエレガントな要素を積み上げたいのであれば、こういうアイソレーションテクニックは “ 武器 ” ですよね。間違いなく。

 

その場合、

腰の可動域を広げるのがまず第一で、余力があれば、その次が肩。 のような気はします。

ラテン系ダンスの場合ね。

というか、腰のストッパーが外れて十分動き始めれば、肩も動きやすくなるはず。

いずれにしろ、姿勢が良くないと上手くいかないのは確かでしょうね。

 

 

 

 

もう一つ、映像を出してみます。

 

 

 

 

なんか、うねる感じ  波が内在している感覚だね。 

簡単に言うと「グルーヴ」ということになっちゃうんだろうけど・・

 

頭部が安定して傾かないから、肩より下の動きがよりダイナミックに見えますね。

  

  

  

  

■関連して、用語について触れておきましょうか。

海外動画でアイソレを説明している時、覚えておいた方が良いのは・・

 

 

ショルダー(Shoulder) もちろん「肩」ですね。

 

ショルダーブレイド(Shoulder Blade)  すごくよく出て来る言葉。「肩甲骨」です。

Bladeは刀とか刃なので “ 肩の刃 ”、すなわち肩甲骨。

でも、いまいちピンと来ないよね。 ショルダーは分かるけど、なんでまた、刀とか刃なの?

そう感じる人も大勢いるかと・・

たしかに肩甲骨のかたちはやや三角なんだけど、刃というところまではいかない。そんな形なんだけど・・

 

これ、おそらく、“ 斧の刃 (アックス・ブレード)” に似ているからなんだと思う。

刀(カタナ)の刃ではなくて斧(オノ)の刃ね。 ご確認ください。

 

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Left_scapula_-_close-up_-_animation.gif

 

 

リブケージ(Rib Cage)  ケージは鳥かご。リブはろっ骨。 「胸郭」と呼んでいるけど、胸全体、ろっ骨全体のことですね。  「ろっ骨で出来た鳥かご」というのはなかなかセンスの良い、形を想像しやすいネーミングだと思います。

実際、ボールルームダンスなんて “ リブケージを膨らませて ” みたいな指導は多いと思う。 バレエもそうかな。

サルサではまず無いです(笑) でも姿勢をきちんとして行く過程で、自然とカッコいい鳥かごにはなって行くと思う。

 

 

 

 

  

それでは、その他のアイソレーション関連の動画を。

  

  

  

  

  

  

  

  

 

  

ジャズダンスっぽいですが、最初から綺麗に動かせる人なんていませんから。

楽しんで、身体がほぐれればそれでオッケーですね。

 

ただし、ラテンソーシャルをやりたくて準備運動やわざわざアイソレーションの時間を取るのであれば、腰の動きに関してだけは可動域が広がって行くよう意識した方が良い。

少しずつで良いですから。

うちのレッスンでは、そこだけは意識してやってます。

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

まあ、奥が深いよね。 アイソレーション。

何か思い出したら、(良いのが見つかったりしたら)また追記したいと思います。